エンタメビジネス実況中継
エンタメビジネス実況中継
才能を殺す人と生かす人の差。
プレビュー
0:00
-6:14

才能を殺す人と生かす人の差。

「それって数字で説明できる?」

これはエンタメ企業で事業統括やプロデューサーをやっていた頃、何度も言われた言葉なのですが、会社にいると、これをほんとうによく言われますよね。だけど今日は、その逆の思考について書きます。

クリエイティブを殺さないほうが、結果的に儲かるし、成功するよね。という話です。

もちろん、「数字で説明しろ」が悪いわけじゃないんです。上司に、株主に、役員会に。説明でいちばん通りがいいのは、いつだって数字です。誰が見ても、同じ意味に受け取れる。感想やこだわりは人によってブレるけど、数字はブレない。大勢が同じ絵を見て動く会社では、数字がいちばん、全員が納得できるんですよね。だから、数字そのものは、悪者じゃないんです。

ではなぜ、才能を殺さないほうが儲かるのか。

どうやって才能は殺されていくのか

漫画を例に見ていきます。一巻の漫画を出したとします。

初版で刷るのは、いまの時代は新人作家ならだいたい5,000部から7,000部くらいと言われています。それが売れて、半分を過ぎたあたりで重版がかかる。悪くない滑り出しです。でも、会社として編集部として正直に言えば「ものすごく、すごいこと」ではありません。「良かった」くらいの話です。

この例から分かる通り、「良かった」「すごい」と評価するとき、いちばん手っ取り早いのは数字です。何部刷って、何部売れて、いくら回収できたか。全部、数字で出ます。出せてしまいます。外から見ていると、それで十分に思えます。売れたなら成功、売れなかったなら失敗。分かりやすい。

でも、わたしはその分かりやすさが、いちばん怖いと思うんですよね。数字はきれいに見える分、それだけ正解か不正解か、成功か失敗か、すぐに烙印を押されるからです。失敗したら終了、成功しても次の3巻でまた数字を見る。次は5巻。正しいんですが、その判断だけだと、結果的にほとんどの漫画がすぐに連載終了になってしまいます。

なぜか。「すごい」「過去最高」のような数字をつくる作品は、めったに出ないからです。だとすると、本当に見るべきなのは「その一巻でいくら売れたか」ではなくなってきます。

その一巻が、どれくらい話題になったのか。読者の中に何が残ったのか。作家性のなにを出せているか。など、つまりプロセスです。そしてもうひとつ、そもそも自分たちは、この一冊を「何をもって成功とするか」を決めていたのか。未来の成功の定義です。

プロセスと、未来の成功定義。このふたつは、初版の部数には映りません。

そして、ここを見極めるのに、数字的な視点だけではなく、クリエイティブの視点がいります。「この作家は、次にこう化ける」「この読者の熱は、こういう順番で育つ」。まだ数字になっていないものを読む力です。センスとも言いますよね。

ここが金融的なルール、つまり目先の数字を健全に伸ばせるかどうかだけで判断することに縛られすぎると、どうなるか。みんなが目の前の数字だけを追いかけるようになります。現場が、少しずつ息苦しくなっていきます。

そして、いちばん割を食うのが、クリエイター(作家含む)です。数字にならない工夫や粘りが評価されないので、クリエイティブな部分から順番に削られていく。最後には、クリエイター自身が生きづらくなって、離れていきます。

これが、じわじわ効いてくる殺し方です。
でも誰も、殺したつもりがないのが一番怖いんですよね。

では、才能を殺さないためには、なにをどうやって見ていくべきか。
先に結論を言うと、一発では見抜けません。二度目以降の打席で、差が出るからです。

ここから先は有料部分です。

Userのアバター

このポストを、朝日けけ。のご厚意で無料のまま読み進めることができます