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AIが音楽を量産する時代に、Twitchが15,000人のDJに金を払う理由。
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AIが音楽を量産する時代に、Twitchが15,000人のDJに金を払う理由。

AIに「夏の終わりみたいな曲を」と頼めば、数秒で一曲できあがる時代になりました。

メロディも、歌詞も、それっぽい歌声も。ボタンひとつで、いくらでも。

ふつうに考えれば、音楽の値段は下がる一方のはずです。実際、ストリーミングの数字を見ると、そのとおりに見えます。Spotifyの1再生は、ざっくり0.4円から0.7円くらい。これはSpotifyが公式に決めている単価ではなくて、いろんな試算からの概算なんですが、桁としてはそのあたりです。
年に10万ドル、日本円で約1,450万円以上を稼いだアーティストは、Spotify全体でたった12,500組。何百万人が曲を出している世界での、12,500組です。

曲は、音楽を聴く行為自体はコピーされる、タダに近づいている。そしてAIは、その制作も安くなっていくという流れをもう一段、加速させます。

ところが、ここにひとつ、つじつまの合わない動きがあるんです。

そのタダになっていくはずの音楽の世界で、世界最大級の配信プラットフォームが、わざわざ大金を払って「生身の人間」を囲い込み始めました。

Twitchです。

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https://blog.twitch.tv/ja-jp/2025/02/27/what-s-next-in-2025-an-open-letter-from-twitch-ceo-dan-clancy/

この記事では、「AIが曲を無限に作れる時代に、なぜプラットフォームは”人間”にお金を払い始めたのか」という一点を、プロデューサーの視点で、お金の流れから読み解いていきます。

このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。

タダの曲が氾濫する世界で、Twitchは「人間」を買った

きっかけのニュースは、お祭りでした。

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https://blog.twitch.tv/en/2026/06/23/an-all-day-dj-party-soundcloud-sessions/

2026年6月26日、TwitchとSoundCloudが組んで、12時間ぶっ通しのDJ配信イベント「SoundCloud Sessions」をやったんです。世界中のDJが順番にプレイして、最後はニューヨークのオフィスでダンスパーティー。「TwitchとSoundCloudが音楽配信で新市場へ」と、いくつかのメディアが報じました。

このイベント自体は、お祭りでした。一方で、著作権の処理や、収益の分け方を新しく決めた提携ではありません。お祭りができたのは、その下にもう、お金と権利の仕組みが敷かれていたからです。

AIが数秒で曲を吐き出すいま、「録音された音楽」の希少さは、たしかに溶けています。皮肉な話で、SoundCloud自身、2024年に利用規約へこっそりAI学習の条項を入れて炎上した当事者でした。批判を受けて、最終的には「アーティストの許可(オプトイン)がなければAIに学習させない」と方針を直しています。CEOのエリヤ・セトン(Eliah Seton)さんは

と書きました。

曲そのものが、どんどんコモディティ(誰でも安く手に入る、ありふれたもの)になっていく。その実感は、間違っていないんです。

なのに、Twitchはそこで、逆の方向に大金を動かしました。

2026年のお祭りの、2年前に起きていたこと

さかのぼると、Twitchと音楽の関係は、ずっと険悪でした。

Twitch自身の発表によると、2020年5月より前は、音楽の著作権侵害の通知は「年に50件未満」でした。それが2020年の春から、レコード会社側から「毎週、何千件」も届くようになります。

その99%超が、配信のうしろでたまたま流れていた曲への指摘でした。同じ年の10月には、過去の配信クリップが大量に削除される騒ぎになります。

Twitchは慌てて、権利処理済みの音楽ライブラリ「Soundtrack by Twitch」を2020年に立ち上げますが、あまり使われず、2023年に閉じました。2021年には音楽出版社の団体とも取り決めを結びましたが、それは「曲を自由に使っていい」という包括的な許諾ではなく、もめごとを少し穏便にするための合意にとどまりました。要するに、長いあいだ「配信で好きな曲をかける」は、グレーで危ない行為だったんです。

その膠着を、お金で解いたのが2024年6月でした。

Twitchは、ユニバーサル、ソニー、ワーナーという三大レコード会社と、インディーをまとめるMerlinまで巻き込んで、ライセンス契約を結びます。「Twitch DJ Program」です。これでDJは、配信で大手の楽曲を堂々とかけられるようになりました。

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https://label-engine.com/news/twitch-dj-program/

ここで、わたしのプロデューサーとしての職業病が顔を出します。こういうニュースは、「誰がいくら払い、誰が権利を持ち、誰が得をするのか」というお金の流れで読むと、景色が変わるんです。

このDJ Programのお金の流れは、こうなっています。

権利を持っているのは、レコード会社です。曲をかけて稼ぐDJは、その対価としてロイヤリティ(使用料)を払う必要がある。ここまでは、当たり前です。面白いのはここからで、Twitchはそのロイヤリティを、DJに全部払わせていません。報道によると、Twitchは「大半のDJが払うべき使用料の50%を肩代わり」し、最初の1年はさらに多めに負担する、という設計にしました。収益化していないDJは、そもそも払わなくていい。

つまりTwitchは、自腹を切って、DJが音楽を流すコストを下げにいったんです。

なぜ、そんなことをするのか。同じ報道の中で、Twitch側は「DJ配信者の数が4倍に増え、約15,000人が収益化している」と語っています。CEOのダン・クランシー(Dan Clancy)さんは、こう言っています。

「レーベルとお金を分け合うことになる。タダではないんだ」

と。

タダじゃないと知りながら、お金を払って囲ったもの。それは、録音された曲ではありません。「いま、この瞬間に、生身の人間が曲を選んで、つないでいく」という行為のほうです。

AIに頼めば数秒で曲が手に入る時代に、Spotify や Apple Music ではどんな音楽も聴ける時代に、世界最大級の配信プラットフォームは、「曲」ではなく「曲を選ぶ人間」を、お金を払って自社に固定しにきた。これが、お祭りの2年前に起きていた、本当の構造変化です。

コピーできるものは安くなり、コピーできないものの価値は上がっていく

以前わたしは、音楽の値段は「コピーできるか、できないか」で二極化していく、という記事を書きました。再生やデータみたいにコピーできるものは限りなく安く、ライブや「今夜」みたいにコピーできないものは史上最高値を更新していく、という話です。

その地図は、いまも正しいと思っています。ただ、その地図をもう一歩アップデートすると、

これまで「コピーできる」は、「すでにある曲を、コストゼロで複製できる」という意味でした。AIが変えるのは、その手前です。これからは「ありそうな曲を、ゼロから無限に生成できる」になる。複製がタダになっただけでなく、制作そのものがタダに近づくんです。

そうなると、希少なものが、もう一段ずれます。

曲が無限なら、価値は「どの曲か」ではなくなる。「その無限の中から、誰が、何を、いつ、どこで、どう選ぶか」に移る。素材がタダで無限に湧くほど、それを選び、並べ、文脈をつける人間の手つきだけが、希少になっていくんです。

DJという仕事は、まさにそれでした。DJは、曲を作る人ではありません。膨大な曲の海から「これ」を選び、この順番で、この夜の、この客に向けてつないでいく人です。言ってしまえば、DJとは、音楽を編集する人間のことなんですよね。

Twitchが2024年に、レコード会社にお金を払ってまで囲おうとしたのは、この「編集する人間」でした。AIが素材を無限にする未来を、おそらく一番ちゃんと見ているのは、現場でお金を動かしているプラットフォームのほうなんです。

ここまでの内容を踏まえて、本記事の論旨をまとめます。
プラットフォームが録音より高く買っているのは、「曲」でも、ただの「ライブ」でもありません。

では、いちばん高く買われているものの正体とは、何なのか。それは、

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