ゲームを原作にしたアニメには、当然ながらプロモーションとしての役割があります。ゲームの世界を映像で見せて、新しいプレイヤーに届ける。IPの拡張としてまっとうな設計です。
『サイバーパンク エッジランナーズ』は、その宣伝としての役割を果たしたうえで、独立したアニメ作品としても成立しました。両方を同時にやれた稀有な事例です。
Season 2の公開がこの秋に控えています。公開を前に、制作陣のインタビューや制作ドキュメントを改めて見直していたのですが、ずっと引っかかっていた疑問がようやく腑に落ちました。
なぜこのアニメは「ゲームの宣伝」で終わらなかったのか。その理由は「クオリティが高かったから」ではなく、IPの渡し方の設計にあったという話です。
エッジランナーズという作品
「サイバーパンク2077」というゲームがあります。ポーランドのゲーム会社CD Projekt Red(以下CDPR)が開発した、サイバーパンク世界を舞台にしたオープンワールドRPGです。2020年12月に発売されました。
CDPRはこのゲームのIPを使って、日本のアニメスタジオStudio Triggerと組みます。Triggerは「キルラキル」「プロメア」などで知られるスタジオで、独自の作画と演出に強みがあるんですよね。
2022年9月、Netflixで全10話のアニメ「サイバーパンク・エッジランナーズ」が配信されました。ゲームと同じ「ナイトシティ」を舞台にしながら、ゲーム本編とはまったく別のオリジナルストーリーです。
結果として、アニメの放映後にゲームのSteam同時接続プレイヤー数はおよそ7倍に跳ね上がりました。CDPRの公式発表によれば、1日100万人以上がプレイヤーとして戻ってきたとされています。Crunchyrollのアニメアワード2023では最優秀作品賞を受賞。プロモーションとしてゲームにプレイヤーを呼び戻しながら、アニメとしても世界中で評価された。この「両方」が起きたことが、エッジランナーズの本質です。
なぜ「宣伝」で終わらなかったか
ひとつ、見落とされがちな事実があります。
このアニメの企画発表は2020年6月25日のNight City Wire。ゲームの発売は2020年12月です。つまりアニメの企画は、ゲーム発売より前から動いていました。「ゲームが話題になったからアニメも作ろう」ではなく、最初からIPの別の表現として設計されていたということです。
そしてわたしが感じたのは、媒体選択のセンスです。「サイバーパンク」というSFジャンルは、「攻殻機動隊」や「AKIRA」を通じてアニメに深い土壌があります。にもかかわらず、この世界観を正面から再現したゲームは意外と少なかった。CP2077がそれをやり、さらにアニメで拡張した。サイバーパンクのファンがもともといる場所にIPを届けたわけです。
CDPRのアプローチで特徴的だったのは、トリガーに大きな裁量を渡したことです。
制作陣のインタビューによれば、今石洋之監督は制作に入る前にゲームの開発版をプレイし、サイバーパンクの世界を「設定資料集」ではなく体感として受け取っています。CDPRは世界観やIP設定を共有しつつ、ストーリー、キャラクター、演出の自由度をトリガーに渡しました。
その結果、CDPRだけでは生み出せなかった視点で世界観が拡張されました。
ゲーム本編が「選択と自由」を軸にしたRPG体験だったのに対し、アニメは一人の少年の暴走と喪失という、まったく異なる感情の層を持つ物語になっています。主人公デイビッドは身体改造に溺れていく過程で人間性を失っていく。Triggerの得意とする作画とテンポで描かれたその物語は、ゲームとは別の角度からサイバーパンクの世界を照らしました。
同じナイトシティなのに、体験がまったく違う。その落差こそが、アニメを観た人がゲームに戻ったとき、街を見る目を変えたのだと思うんですよね。ゲームの中で通り過ぎていた路地裏に、デイビッドの影が見える。
委ねたから、強くなった
作品の権利を自分たちだけで握り込まず、外部のクリエイターに渡して、その作家性を活かす。言葉にすると簡単ですが、実行は簡単ではありません。
「委ねる」と「丸投げ」は違います。
わたしもIPを外部のクリエイターに渡す判断をしたことがありますが、何を握って何を渡すかの設計が甘いと、世界観が崩れます。CDPRとトリガーの間には、20ヶ月以上にわたる共同でのストーリー開発がありました。世界観の整合性を保ちながら、表現の自由度を確保する。その両立の設計があったからこそ、「宣伝アニメ」ではなく「作品」が生まれた。
ここまでが、Edgerunnersに「何が起きたか」の話です。
プロデュースの目でもう一歩だけ掘ります。CDPRは具体的に何を握って、何を渡したのか。わたしはここに、プロデュースの基本設計が凝縮されていると思っています。整理すると、この設計は、











